airiphys’s memorandum

@airi_physics の覚書

中国のポスドク制度(完結版)

中国のポスドクは皆,博士后科研流动站(ポスドクステーション, boshihou keyan liudongzhan)に入る必要がある.

ポスドクステーションは大学や研究所に設置されているが,すべての大学研究所に設置されているわけではない.(バイドゥによると2021年時3357個あるらしい)

実際私は中国科学院大学のポスドクステーションにいながら(給料の大部分を北京からもらいながら),温州研究院で研究している.温州研究院にはポスドクステーションはない.

この場合,流动站(=流動駅,liudongzhan)は中国科学院大学で工作站(=仕事駅, gongzuozhan)は温州研究院ということになる.それぞれに导师(アドバイザー, daoshi)がいるが,私の場合は流动站のボスは名前しか知らず,会うことも連絡を取る機会もずっとなかった(最後にはサインが必要だが).

 

ポスドクステーションに入ることを进站(=駅に入る, jinzhan)という.进站手続きは事務の人がやってくれたが,結構時間がかかった.おそらく,中国博士后网(=中国ポスドクネット,https://www.chinapostdoctor.org.cn/auth/login.html)というウェブサイトに登録し,必要な書類を入れつつ申請したものと思われる.通しのポスドク番号を持つことになる.共通の要件としては,35歳以下,基本は学位を取ってから三年以内,健康,学位を取った場所と同じ場所でのポスドクでないこととされている.

 

また,中国博士后网を使う他の機会としては,中国博士后基金ポスドク専用グラント)に応募する時である.一番有名な国のグラント(NSFC)と同じ時期,3月あたりに応募できる(年が明けると一気にみんなグラント書きモード).ただし,进站からnヶ月以内の人しか応募できない(要確認; n=16くらいだった気がする).ここで注意なのが进站と労働契約(劳动合同, laodong hetong)は違うことである.私の場合,进站は2021/1であったが,それからビザをとるのに必要な書類を準備できるようになり,申請して2021/4からの契約だった.(契約書が作られたのはもっと後...7月とか.給与の振込の方が先だった.)契約書は中国科学院大学,温州研究院,私の三方(甲乙丙)のものである.

 

 

中国のポスドクの主な義務イベントは三つ.

  1. 开题 kaiti
  2. 中期考核 zhongqi kaohe
  3. 出站报告 chuzhan baogao

1.については,下の記事に書いた.2.は結局報告書提出のみであった.

中国のポスドク制度 - airiphys’s memorandum

 

出站の時,さまざまな書類を用意する必要がある.中国博士后网にログインして出站申請の項目を作って,色々事務的なことを入力する.中国語で書かなければならないところは,自動翻訳と同僚を頼るしかない.一番時間がかかるのは,出站报告(駅をでる報告書~postdoc thesis)である.Wordのフォーマットがあって,論文からうつしていくなどして書いていく.言われてから二週間で仕上げるものなので,一から全部書くのは無理だと思われる.これは当然堂々と英語で書けばいい(中国人は中国語で書いていた).電子版を提出して,チェックしてokなら自分で製本しにいく必要がある.その後しばらくして(私の場合はn週間),出站のプレゼンがある.英語で書いて出站した友達によると,「英語だと特に中身はほとんど誰にも見られない.ただプレゼンで聞かれたのはこの成果は論文になっているか,それだけだった.」.ただし,私の時は皆違った(後述).

 

その後,結局事務の人が忙しいとのことで二週間くらいpostdoc thesisを直せる時間があった.急に明日までに製本してと言われた.私はその前から製本は自分で言って条件を説明するのは大変だから,一緒のタイミングの友達に頼んであった.pdfを送ったら一緒に作ってきてくれた.ありがたすぎる.

出站答辩(defense, chuzhan dabian)は8分間のプレゼン.その中に論文とかグラントなどのまとめスライドも入れる.

 

その後実施3~4日前にdefenseのスケジュールがきて,defenseの実施.PIが4,5人とHRが2人いた.私の時は4人同じタイミングで出る人がいて,それぞれ内容に関する質問がきていた.(他の人は中国語だからわからないけど,多分).出站後どうするのかも聞かれる.オフィスに帰ってその日のうちに合格の連絡が来る.

 

その後,二週間くらい経って,全ての確認ができたから「中国博士后网(=中国ポスドクネット,https://www.chinapostdoctor.org.cn/auth/login.html)」で提出を押して,とHRに言われる.postdoc thesisのpdfはまだアップしてなかったのでそれをアップして,提出(提交, tijiao)ボタンを押して完了.

 

その後のカードキー返却とか諸々はローカルな期間によるものだろう.私は色々事情があってまだだ.

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ちなみに他の研究所独自の義務としては以下の通り.

 

研究所独自の義務:

年度考核(12月): 研究所で働くすべての人がだす報告書.

个人总结:個人のまとめ

平日の打刻:dingdingという中国の汎用アプリで自分のアカウントと研究所を紐づける.GPSで数百m範囲くらいでチェックインアウトできた.一応研究所全体の決まりでは8:30-17:30. PIは義務がないと思われるが,多くの職で必要.このアプリは事務プロセス承認(有給とか,出張,予算を使うなど)もできる.たとえば直属のボスにまず送られ,その後副院長とHRに送られるとかが自動でおこなわれる.

 

グループ独自の義務(途中から開始した):

双周总结=biweekly report. pptを提出するのみ.group MTGも少しやってた時期もあったが.

ただしこれはかなりグループによる.一般的には日本と比べると中国人ボスはメンバーをコントロールしたい人の方が多いと思われ,実験室打刻しかも9じから21までなんて噂も聞いたことがある...私はそうでなくてよかった.体がもたない.緊迫感を持って毎週面談しているグループもある.私は特にスケジュールせず随時ふらっと行くという感じだった.